芸術学生の就活日記

芸術学科・音楽専攻に通う現役女子大生の病むほどアーティスティックじゃない毎日。J-POPから股ぐらまで語り尽くす

BOMI「A_B」レビュー (OTOTOY掲載)

REVIEW : BOMI『A_B』

 

このアルバムにおいて重要なことは、今作がBOMIの半生を振り返った自伝的アルバムであるということ。そして、そんな内省的な作品にも関わらず、作詞は全編にわたりTokyo Recordingsの小袋成彬(OBKR)が行っているということだ。BOMI本人が自身の半生を1万字の文章でまとめ、それにインスパイアを受けて小袋が作品に落とし込む、という一風変わった形で作品が作られた。私はその方法が非常にうまく作用しているように思う。

 

彼女の生い立ちは、非常に稀有なものであるようだ。
「生まれは、ニューヨーク。女優の母親(当時22歳)と、学生で留学中だった父親(当時21歳)のあいだに誕生した。そして、2歳半のときに両親が離婚し、一旦は母親の母国である韓国に、母親と一緒に引っ越すも、3歳になると父親側の家族に日本へ連れて行かれ、養子に入る。その後、血のつながりのない「母」と「祖母」と共に、18歳で上京するまで大阪にて暮らしていた。」(作品資料に記載されていたものを引用)


音源は今ほとんど聞くことは出来ないが、活動初期は、頭をベリーショート…というより丸刈りにし、本名の「宝美(ぼうみ)」として、自分の壮絶な半生を、切実で叙情的な歌を歌いあげてきた。これまでのインタビューによれば、そうやって「とにかく自分が生きていることを主張」してきたという。

 

しかし「その種の切実な悲しさや寂しさは10年も20年も続くもの」でなく、「歌っていくうちに悲しいフリをしていた」こと、「自分はいつまでも尾崎豊じゃいられない」ということに気付き、当時のBOMIの等身大なアウトプットとして、今まで私達が聞いてきたような明るくポップな歌を歌うようになったのだ。

 


そんな思考の変化を経て、今のBOMIはどうなのか。一聴してこの『A_B』は、サウンドから歌詞、歌い方まで、今までのBOMIとは全く違ったものになっている。そこにはやはりTokyo Recordingsという存在の介在が深く関係しているようだ。

 

 

続く